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『歌と彷徨 1 』
中上哲夫
[ISBN978-4-8120-1946-7]

「歌と彷徨」のふしぎ

中上さんの詩集はよく読んでいたのですが、電子ブックでまたちがう魅力を発見しました。詩の背後に生起する物語的時間の質が感じられて、いま目の前で私に語られているような生々しさを感じました。また音楽の選び方がよくて、中上詩の雰囲気を引き立て、すてきに立ち上がらせていますね。

彼の「エルヴィスの死んだ夜に」という詩集がありますが、ふしぎなことにエルヴィスに通じる呼吸を感じます。エルヴィスの歌声は、セクシーであるとともに、それは聞いていると、歌詞というよりも、「語り」そのもののように思われてくるのです。他の歌手とそこが違います。エルヴィス自身、言葉をとても大事にした人とか。

「歌と彷徨」の頁をめくるごとに、詩人の生きてきた背景、今もそこに揺れ続けている背景に、だんだん巻き込まれていく自分がいるようです…。
登録日: 2012/02/15 投稿: 水野 るり子様

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