糸をたらす
ちからいっぱい口をあけて
その中が海だ
足のすくむ
まっくらな海だ
(「海」より)
優れた詩は自ずから優れて批評を内包する、とはよく言われることだが、前述の北川冬彦の選評にあった「現実批判の精神」もまた、星野元一の詩を考える上での重要なキー・ワードの一つであろう。星野さんの詩が持ちつづけてきた批評性を解きあかすためには、「匿名性志向」と「辺境からのまなざし」という二つのヴェクトルに思いを致す必要があると私は考える。
(鈴木漠・解説より)
才色兼備の夫人を前にして、なるほど、この人を射止めるために星野さんはタヌキに化けたのか。森のタヌキもお株をとられて慌てたことだろう、などと例によってくだらない空想をし、思わず笑いそうになり、私も慌てた。星野さんの上質なユーモアは私たちの心を暖かくしてくれる。星野さんの詩は、また面倒な解説などなくても、まっすぐ読者の胸に入ってきてくれる。
(小柳玲子・解説より)
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