彼はじっと待っている
細い糸の向こうに沈む暗がりをみつめ
自分の思いとは逆に
水底から妙な形をした生きものを釣り上げるまで
「湖底の村」より
詩人酒井力の詩は、押し並べて典雅な端正さと、同時に抑制しつつ低声で語る、のっぴきならない思想が詩を支えていて、卑小な自分を殺した抑制が、却って詩全体の緊張感を際立たせているのである。おそらくここに彼の詩の真実が息づいている筈である。(大井康暢・解説より)
酒井さんは世界をもっと豊かにするために、「虚無の時間」を「明日を夢見る時間」へと転換しようと試みている。そんな叙事詩でありながらも、内面を豊かに掘り続ける新たな叙事詩である詩篇を多くの人びとに読んでほしいと願っている。(鈴木比佐雄・解説より)
今度酒井さんの詩を通読して見て、酒井さんがいかに信州の自然とともに歩んできた詩人であるかがわかる。と同時に、自然と時間の相剋に身を置くことの苦悩を詩化する方法の模索を、半生の課題としてきたことも、である。(宮沢肇・解説より)
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