そいつらは
行列を作った
言葉があったわけではない
だが 心はあったかも知れない
でなかったら
希望
(「また みみずが唄う」より)
なぜいまごろ児戯にも似たようなわたしの安保体験を思い出したかというと、この『文庫詩集』のゲラを読んで、労働現場に一貫して身を置き、そこからの反逆のルサンチマンを詩の言葉の高みへと紡ぐ、詩人としての石黒の自負と不屈の営みに、わたしは圧倒されるものを覚えたからである。そこにはあのときの挫折が(この言葉を石黒は好まないだろうが)、自覚された主体的な熱量に変容して持続されている。
(暮尾淳・解説より)
戦後六十五年が経過して、半世紀以上の時間を要しての編、詩集である。日本の社会状勢、政治状勢は、世界の流れの中にあって経済状勢もわるい。日本人の知力も若い人たちの方から劣化している。国家の行方が目的を喪失して判らない。石黒忠は、明らかに「社会派」である。批判的リアリズムが背骨となり、一本勁く筋が通っている。思想とか、哲学とか、学究的なことを追求しても、生活が困難である。さすれば、どのように、現代文学ないし現代詩の領域をすすめていけばいいのか、ためらいは充分に悟っているだろう。
(長谷川龍生・解説より)
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