こころの片すみには
絶やすことなく 悲しみの部分
を たくわえておこう
(「世界が円筒にみえたところから」より)
ほぼ同じ世代を生きてきた私など、ひもじい戦中戦後の体験と、その記憶に言葉を奪われ、戦後詩の熱病に冒されるまま、憤怒と悔恨の情念を食いつぶしてきた思いがある。しかし、香山さんにはそれがない。本当に一途に人と事物の存在の本質に、錘を下ろしていく。焼け跡の校舎で耳にした謡曲のあの声の呪力が運命的に道を示したのだろうか。
(石原武・解説より)
香山雅代は、詩における精神の核と認識の凝縮性。そこから生ずるところの跳躍やためらい、不安やうつろいを、己れに問いかけ、他者に、あるものの予感を与え、さらに消え、現われては亀裂する内的衝動の表象としてのイマージュと言葉、それらを、受けとめる側にあずけておいて、つぎなる瞬間に自ら立ち会うことの出来る詩人といってよいと思う。
(丸地守・解説より)
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