大阪文学学校の講師には、詩集出版のアドバイスまでは求められていないのだが、私が見た限り山口の提出作品は自制の効いた上質のものであり、個々の作品レベルを向上させるよりも、一冊の書物として詩集を仕上げることの方が重要だと感じたのである。そして、山口は愚直に私の助言に従い、驚異的な集中力で次々と作品を完成させていき、第一詩集『象牙の塔の人々』(澪標)は二〇〇九年五月三十一日に出版された。中でも山口の優れた研究業績を題材とした「N‐グリカン」は科学的知識を土台に社会問題を自分事として考えさせて読ませる秀作であった。
(苗村吉昭・解説より)
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