ああ しかし言葉をあやつる者よ
おまえがいるから
景色がよく見えない
おまえがいるから
翻ることができない
いっそのこと舌を抜いてしまおうか
(「軌跡」より)
旧満州国生まれ。北海道育ちの森野満之に「脱藩」という言葉はそぐわないが、比較のためにあえていえば森野満之は「脱藩者」としての詩人である。「望郷の詩を歌うこと」のできる場にいるのである。(中略)再度あえて言えば、この詩人は片岡文雄の説く「日本列島を貫く在地者による主体の位置確保」という場につながってゆくような詩を書いているのである。
(小松弘愛・解説より)
健やかな健全さが正義感を貫くことだとすれば、市井を生きることこそ難しい。満之は珍しいその人なのである。(中略)森野満之の社会的思念にみちた叙情詩は、謎解きのようにスリリングだ。その底に怒りの眼が光っている。そして間歇泉のように、骨太い風刺精神を噴き上げる。
(森田進・解説より)
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