清水茂は、詩の潮流や詩人の交りから退いた処で詩を書いてきた。そして生前から整えていた膨大な記録が残された。この『カイエ・アンティーム Cahier intime』は、日常の瑣末な記録、些事の忘備録の類ではなく、もっと文学的で心の機微にふれる内容が精選されている。「人には記憶してくれとは願わない、ただ自分は思い出を携えて行く」――清水は自らの没後について、本文の中でこう記している。しかし生前の姿を髣髴とさせるこの著作が残されていた。清水氏の詩作品を考える際にも、本書は何よりの贈りものであると思う。
(川中子義勝)
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