ぼくは、会田の詩の形而上性をたかく評価する。会田は、その到達した水準、この水準をそののちは安価な満足と交換しようとはしないだろう。その水準に達した者だけが、さらに歩んでゆける地平に迫るのだ。とぼくはいいたいのだ。現在の会田に、むだな傲慢はない。今の会田に、乗り越えきたった者の爽やかな清潔さとさえいえる相貌を、僕は見ている。会田の詩に逸脱はなかった。苦闘と言葉どおりにいえるほどのオーソドックスな姿勢だけが、一筋の道をつらぬいている。唐突なようだが、ぼくはこれを会田千衣子の中立進化説といいたい。真の進化は突然変異によらない中道のひとすじにある。静と動、早熟と未熟、女性と男性、自己愛と他者愛それぞれに敏感に揺れながら、中立の道をゆく時間・空間のスケールが、その詩の特質だ。これは客観的にいって、現代詩、いや現代詩の枠をとっぱらった詩の将来の可能性をもっとも大きく広くはらむ方向である。
(江森國友・解説より)
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